takminの書きっぱなし備忘録 @はてなブログ

主にコンピュータビジョンなど技術について、たまに自分自身のことや思いついたことなど

これから社会に出る学生へのアドバイス

若者に説教垂れるようになったら立派なオッサンだというのは自覚しつつも・・・
「就職人気トップは「公務員」 安定志向を反映」(J-CASTニュース)
これを見てちょっと思うところがあったので、リストラ経験者の僕からアドバイスをしたい。

常に自分の市場価値を意識しよう

みんな安定が欲しいから、血眼になって大企業や公務員を目指すんだろうけど、終身雇用がほとんどなくなっちゃった今、リストラっていうのは誰にでも起こり得る問題なんじゃないかって僕は考えている。
僕が新卒入社した会社は外資系ではあったんだけど、日本法人は今まで一度も首切してないって豪語してた。不景気が始まった頃は従業員の給与カットなどで頑張って雇用を維持しようとしていたみたいだけど、長引く不況でそれも限界を迎えて、ついにリストラに踏み切った。で、一度リストラが始まったら後はもう歯止めが効かなくなったのか、以後も定期的にリストラが入るようになって、従業員の数はどんどん減ってくし、お陰さまで僕も職を失いました。
なので、大企業に入ったからって安心せずに、いざって言うときは転職できるんだって心構えを持っておくのはとても大事だと思ってる。確かに転職はリスクだ。アメリカみたいに転職を重ねることでキャリアを積んで年収が上がるっていうのは日本ではなかなかない。むしろ年収は転職を重ねた方が下がる。(僕みたいに)
でも、転職しないリスクっていうのも存在する。今の会社でいくら頑張っても自分のスキルとか経験とかが積めず、ルーチンワークを何年も続けることが見えているなら、それはリスクだ。転職市場では、同じスキルセットを持っているなら当然のことながら若い人間の方が有利だし、悲惨なのはその会社にしがみついて大したスキルアップもできないまま、歳をとってからリストラされるというパターン。ましてや、今は昔みたいに会社に長く勤めれば必ず給料が上がるわけでもない。
だから、常に自分が他の会社でも通用する人間か、自分の労働者としての市場価値はどうかというのは意識した方が良い。そして、今いる会社で市場価値を高めるための努力をし、それがどのような手を尽くしても上がらないと感じたなら、例え給与が下がるとしても転職を一つの選択肢とするべきだと思う。
それと、いつでも転職できる状態と言うのは、いわば会社と対等な雇用関係にあるということでもあるし、精神的な自由を手にいれることでもある。もし会社が不正を働いていて自分がそれに巻き込まれそうになったら?もし上司のビジネスのやり方がまずくて、いずれトラブルを起こしてその火の粉が自分にかかることがわかっていたら?精神的な自由は、自分が正しいと信じる生き方を貫くためにも重要なんだ。
そして長い目で見れば、従業員が自立していると言うことは会社にとってもプラスに働くはずだ。(が、その理由は長くなるのでここではしない。)
昔、小学校の先生が「なんでイジメを見かけたのに止めないんだ」みたいなことを言ってたことがあったけど、イジメを止めようとすれば自分がいじめられるわけで、その勇気っていうのはなかなか持てるものじゃない。でも精神的な自由は、その時にイジメを止めに入る勇気をくれる。


最初にどんな職種につくか、は結構大事

日本の企業はどういうわけか、新卒社員が大学時代どんな専門性を身につけてきたかというのはあまり重要視しない。僕が入社した会社は理工系修士卒の人間を営業に回したりしていた(僕もあやうく営業にまわされるところだった)。
入社する時点でだいたいどの部署でどんな仕事をするって決まっている場合もあるけど、会社によってはあまりそこら辺細かく決まってなくて、新入社員研修の後決めて行くようなところもある。
で、最初に入った会社でどういう仕事につくかと言うことが、どんな会社に入るか以上に自分の人生のその後を大きく左右する。例えば僕は元々開発職を希望していたんだけど、実際は営業の技術サポートに回された。そして4年半後にリストラされた後、開発職につこうとあちこち応募してみたけど、開発経験がないということで片っ端から断られた。(最終的にはほとんど従業員がいないようなベンチャー企業に拾われたけど)
新卒入社では、それまで何を勉強したかと言うのをあまり問われないけど(それはそれでどうかと思うけど)、一度社会人になったら第二新卒でもない限り、どんな仕事をしてきたのかという経験は大きく問われる。今までのことは辞めて別の全く新しいことに挑戦するっていうのは、サラリーマンではかなり難しい。だって転職の時に採用する側は、即戦力が欲しいわけだから、やる気があっても能力があるのかどうかわからないような人材は怖くて雇うことはできない。
なので、ある程度やりたい事が見えている人は、会社の規模にこだわるよりもやりたい事にこだわって会社を選んだ方が良い。またもしその会社が入社後に配属を決めるようなシステムで、希望を聞かれたなら「別にどんな部署でも一所懸命働きます」と言うよりもちゃんと希望を伝えた方が良い。
ただし大企業に入るメリットとして、大企業ならではの組織運営の仕方と言うのを中から見ることができるのは大きな利点だ。大企業から中小企業やベンチャーへの転職は容易だけど、逆のパターンの転職は実際のところ難しい(その人が残した実績によってはもちろん可能ではあるけど)。だから、同じ仕事内容で新卒として大企業とベンチャーとどっちを選んだら良いか?と相談されたら、僕は大企業を勧める。

仕事の本質は人の役に立つこと

仕事っていうのは、お金を稼ぐことが大事なのは確かだし、それゆえ安定志向になるのは理解できる。でも、考えて欲しいのは、なぜお金を稼ぐことができるのかということ。
例えば企業はモノを売る。お客さんはそれを買う。なぜお客さんがそれを買うのかというと、それが自分の役に立つものだと判断したからだ。そのお客さんが払ったお金というのが回りまわってあなたのお給料になる。
例えばあなたの仕事が、毎日が雑用ばかりでつまらないと思うかもしれない。でもその雑用の御陰で、他の人が自分の仕事に専念できて、それが結果としてお客さんのためになり会社の利益になる。
だからこそ、職業に貴賎なしだと僕は思っている。お金をもらえるのは誰かに必要とされているからなんだ。
で、前のところで「自分の市場価値を意識しろ」とか「最初にどんな職種につくかは結構大事」って言ったけど、これはある程度その後の努力で選択する立場になれる人間に向けた言葉になっている。でも実際は自分が何やりたいのかもわからず、どういう方向にスキルをつけていいのかもわからず、ただ日々生きてお金を稼ぐのに精一杯という人もたくさんいるだろう思う。そんな時、夢を持って仕事をしてないことを悲観する必要はまったくないんだ、ということは言っておきたい。
昔読んだ「絶望に効くクスリ」というインタビュー漫画の中で養老孟司が語っていた仕事観が印象に残っている。記憶が曖昧なので台詞は正確ではないと前置きしつつ、「仕事っていうのは道に空いた穴を埋めるようなもの。自分の好き嫌いではなく、後を通る誰かの役に立てればそれでいい」みたいなことを言っていて、まさにこれこそ仕事の本質なんじゃないかと思う。
公務員でもその本質は一緒。民主主義社会で、なぜ国民が税金を収めるかというと、それをもとに自分達の生活を豊かにするための行政サービスを受けるためだ。「安定するから」とか「家族が喜ぶから」も大事だが、それを一番の動機にして欲しくない。自分のやっていることが回りまわって、サービスを受けている住民たちの幸せに寄与しているんだという意識を強く持って欲しい。
何を当たり前なことをと思うでしょう。でもここに書いたことって、上司のプレッシャーやら株主のプレッシャーやら納期のプレッシャーやらにさらされているうちに高い確率で忘れると思う。


以上がオジサンからのアドバイスです。
まあ、僕自身が人生をさまよっている最中なので、あんま偉そうなこと言える立場じゃないんだけどね。(笑)