久しぶりに非技術系のエントリ(長文)。
先日、こんなホットエントリが上がってた。
勉強が何の役に立つのかを全力で考えた。
http://anond.hatelabo.jp/20120608010005
このエントリーが想定しているのはだいたい小学生から高校生くらいまでだと思うんだけど、実はこういう「勉強って何の役に立つの」という疑問に対する回答を一番必要としているのって大学生じゃないのかな、と思ってたりする。っていうのは、高校生くらいまでは目の前に受験というイベントがあるから、そんな疑問があっても否が応でも勉強するわけだけど、大学生の場合必要性を感じなければほとんど勉強しなくても卒業できるから。
実際、先日某企業のマネジメント職で、新卒生を何人も面接している友人と飲んだんだけど、その際「サークル活動/バイトを頑張りました」という自己アピールをしてくるやつが未だに多いと嘆いていた。その友人がヤバイと思ったのは、今の新卒生というのは物心ついた時から不景気のはずで、それなのに未だになんの目的意識もなく大学に通っているという点だった。これなんかはまさに、学生達が大学で勉強することにメリットを見いだせていないという例だと思う。学生にとって大学進学のメリットは、就職のために「この大学を卒業したよ」という資格を取得することであって、それ以上の意味がないってことなんだろう。
同様に、大学で勉強するメリットというのは学生だけでなく、企業側にも伝わっていないんじゃないかという気もする。例えば大学生は3年生の12月頃には就職活動を開始し、そのあと半年近く、人によってはそれ以上の時間を割いている人が多い。つまり卒業までの大事な時間を勉強以外のことに費やさなければいけないという状態を企業側が強いている。また企業に入ると、大学で学んだこととはまるで違う分野の仕事につかされることも多い。これは企業側が大学というものを教育機関として評価していないという意味もあるだろう。
でも個人的な経験で言わせてもらえば、最初の配属が自分の専門とは関係なかったにも関わらず、社会に出てから大学(院)の研究室で勉強したことは大いに役に立った。それはただの知識というレベルを超えて、大学(院)の研究室で身に着けた「思考方法」が仕事の現場で非常に「使える」ということに気づいたからだ。
なので以下では学問で身につく「思考方法」に着目して、自分の経験も踏まえてそれが具体的にどう仕事で役に立つのかについて考えてみたい。
学問の分類
僕は学問を、その思考法によって4つのカテゴリーに分類している。それは、「科学」、「工学」、「哲学」、「論理」だ。普通は「自然科学」、「社会科学」、「人文科学」と分類するらしいが、僕はこれらの分野を横断する形で分類をしている。そもそもが科学にせよ工学にせよ、その思考法において文系/理系の区別はない。
「科学」: 対象を観察し深く理解するための学問
「工学」: 目的をどのように実現するかという方法論を検討する学問
- 機械工学、電気工学、法学、経営学、医学、農学、etc
「哲学」: 人間の価値観を体系化する学問
「論理」: 厳密な論理体系を構築することを目指す学問
- 数学、論理学、etc
大学では、上記のいずれかの分野について学ぶことになる。そして、これらの分野で身につけた思考方法こそが、普遍的に役立つスキルであり、また訓練によってしか身につけることができないものだ。本来、大学のゼミや研究室における活動というものが、その訓練の場となる。
以下では、それぞれの学問分野ではどのような思考方法を取るのかということと、それが仕事でどのように役に立つのかを具体的に示していきたい。
(2012/06/10追記)
あまりに長くなったので、エントリーを分割しました。
1.「勉強が何の役に立つのか」について本気出して考えてみた
2.科学的思考法がどう仕事の役に立つのか
3.工学的思考法がどう仕事の役に立つのか
4.哲学的思考法がどう仕事の役に立つのか
5.論理について
6.科学的に分析し、哲学的に判断し、工学的に実行する
7.教育機関としての大学の差別化
結論
とりえあず時間のない人のために結論だけ書いておきます。気になるところは、上のリンクをたどって詳細を読んでみてください。
1. 学問を学ぶことで、普遍的に役立つ思考方法を身につけることができる。
2. 思考方法は「科学」、「工学」、「哲学」、「論理」の4つに分類でき、ロジックツリーやMECEやPDCA等、大半のビジネススキルはこれらの思考方法の応用でしかない。
3. 「科学的に分析し、哲学的に判断し、工学的に実行する」ことが学問を修めた人の理想の行動原理。優先順位を間違えて、哲学や工学を科学の前に持ってきてはいけない。
4. (余談)普遍的な学問的思考法を身につけさせることが、教育機関としての大学の差別化ポイント。