takminの書きっぱなし備忘録 @はてなブログ

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科学的思考法がどう仕事の役に立つのか

前回【「勉強が何の役に立つのか」について本気出して考えてみた】の続き


前回僕の独断と偏見で、学問を「科学」、「工学」、「哲学」、「論理」の4つに分類した。
ここでは特に「科学」がどんな思考方法に基づいていて、それが具体的にどんなふうに仕事に役に立つ(立った)のかをまとめてみた。
前のエントリーでは「科学」を、「対象を観察し深く理解するための学問分野」と定義した。これには物理学や化学のようなわかりやすいものだけでなく、経済学、歴史学社会学などの社会科学や人文科学もまとめて「科学」という分野にくくってみた。以下では、その理由も説明したい。

科学とは?

科学は人間が対象を「見る」ための学問だ。対象を見るために、科学では対象をモデル化することを目指す。モデル化というのは、人間が理解できる言葉や数式で記述した対象の振る舞いや仕組みのことを指す。例えばニュートン力学では「力」、「エネルギー」、「質量」、「加速度」などの概念を用いて自然界を記述しているが、これらはあくまで「概念」であって、人間が目で見て認識出来るものではない。でもこれらの概念を導入することで、物体の運動の仕組みがうまく説明ができるし、予測することも可能になる。だからこれらの概念を導入し、概念間の関係を数式で表すことで、自然界をモデル化している。

科学的思考法

科学ではこのようなモデルを作成するために、とにかく事実やデータを集める。これは自然科学であれば実験を通して取得できる数値化できるデータだろうし、経済学などの社会科学であれば政府や独自に集めた統計データ、歴史などの数値化が難しい対象であれば歴史書などの文献を集めることになると思う。そして、この集めた事実を説明する原理や仕組みについて仮説(=モデル)をたて、その仮説を裏付けるための事実をまた集めるという作業を繰り返す。この仮説設定と事実/データ収集を繰り返すという手法を科学的アプローチ、または科学的思考法とここでは呼ぶことにする。

応用例

さて、こういう科学的思考法というのは実際どう仕事で役に立つだろう。実はこの考え方は意識的にせよ無意識的にせよ実践している人は多いし、いわゆるビジネスハウツー本なんかを眺めてみれば、こういう考え方を至る所で見ることができると思う。例えばいわゆる品質管理(QC)プロセスにおけるPDCA(Plan-Do-Check-Action)は、仮説と検証という行為を繰り返す、科学的アプローチと言える。
他にもマーケティング活動は典型的なビジネスにおける科学的アプローチだろう。マーケティング活動自体は非常に多岐にわたるけど、どんな製品が売れそうかとか、どこに営業展開したら儲かりそうかという仮説を、実際購入した人のデータや人口構成やら様々なデータから立てる。
市場という大きなものではなく、個別の顧客への営業を考えてもこのアプローチは使われている。例えば営業活動で何も考えずにお客様のところに行って、ひたすら自分の製品をアピールするのはダメな営業だ。優秀な営業はお客様がどんなニーズを抱えていそうかという仮説をたてて望む。そしてその仮説を元にお客様と会話をし、お客様が話した内容からその意図を探り、その仮説を修正していくことでお客様のニーズにあったソリューションを売る。
また、エンジニアであればデバッグトラブルシューティング時に普通にこういう思考法を使っている。例えばうまく動かない原因などを、発生した症状を詳細に見たり、ログファイルを眺めたりして、原因についてあたりをつけ、更にその周辺のデータを集めるという作業を繰り返しながら問題を絞り込んでいっているはずだ。

まとめ

  • 科学は、なんらかの対象を人間が理解できる形にモデル化する学問
  • 仮説をたて、事実やデータを集めてそれを検証する、というサイクルを繰り返すのが、科学的思考法
  • 品質管理、マーケティング、営業、トラブルシューティングなどに応用できる